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2015/03/08  「あの日の僕らにさよなら」「友情」感想
◆「あの日の僕らにさよなら」/平山瑞穂/新潮文庫◆
あらすじ:桜川衛と都築祥子。共に17歳。互いに好意を抱きつつも、一歩踏み出せずにいた。ある夜、家族不在の桜川家を訪ねた祥子は偶然、衛の日記を目にする。綴られる愛情の重さにたじろいだ祥子。何も告げず逃げ帰り、その後一方的に衛を避け続け二人の関係は自然消滅に…。あれから11年。再会を果たした二人が出した答えとは―。―アマゾンより
これ読んだときに「うへ、なんかちょっと身に覚えが!」ってなりました。なんというか、桜川くんが、数年前に付き合っていた男の人に似てるっていか、似てるっていうとなんか失礼なんだけど、色々と、自分の中でこねくり回して人のことを拡大解釈(?)しちゃうところとか、根暗っぽいところとか、人のことを自分なりに分析して人のことを分かった気になるところとか、なんだろうなあ、間違ってないんだけど。桜川くんは勝手に祥子ちゃんが自分を好きなんじゃないかって思ってしまって、それを日記につけている。中々日記に心情吐露する17歳男子っているのかな?まあ変に頭よくてひねくれてたらするか。祥子ちゃんはそれを目にしてびっくりする。なんかほんとにわかるっていうか、祥子ちゃんは桜川くんに居心地の良さを感じてはいるものの、それが恋愛といわれるとたぶん違う、って、答えるだろうなって感じ。だと思います。変に気取ってなくて格好良くもなくて博識で、自分だけに見せてくれる桜川くんに、祥子ちゃんはある種の独占欲を感じてるとは思うんだけど、それは自分だけが抱いて良い感情であって、桜川くんは抱いてはいけない、ので、いざ彼が自分のことをそういう気持ちをもってみていたって思ったからかなり引いたんじゃないかと思った。つうか私がそうなだけか。なにこれ、自爆?
で、とにもかくにも、祥子ちゃんは男運が悪い。つまりだめんずうぉーかーなんだけど、でも、そのだめんずっていうのも中途半端なんだけど、それがまただめんずっぽい。高校生のパートは大体1/3ぐらいかな?序盤なので、こっから話が動き出すけど、しかし男運がない。一方桜川くんは社会人になってイケメンヤリチンになってしまう。んですね。祥子ちゃんへのコンプレックスかね(適当)。
で、ふとしたきっかけで桜川くんは祥子ちゃんの消息を追って再会することになる。
なんというか、全部ドラマ仕立てっていうのか、映像化しやすそうっていうのが読んで最初の感想でした。手頃な物語っていう感じ、で、最初名前だけ見たときに著者は女性かと思ったけれども、内容読んでてこれ男なんじゃねえかと思ったら案の定男性でした。すべて、こちらの想像の余地なく語りつくされていて、だからすごくお膳立てされた綺麗なお話っていう感じです。好きかと言われるとそうでもないし、嫌いかと言われてもそこまでっていう感じ。
しかし、本当に祥子ちゃん男運がなく、最後にオーストリア人のダメ男につかまってしまう。で、そのダメ男の前評判が「あいつは危ない」云々で、てっきり私はものすっごい性虐待でも受けるのかと思ったらなんかちょっと違って、なんかそこも拍子抜けでした。たぶんこれは「その女アレックス」読んだ後だったからだと思う。きっと。読んでて、作者さん、結構優しい人なんだなと思いました。

◆「友情」/武者小路実篤/新潮文庫◆
あらすじ:脚本家野島と、新進作家の大宮は、厚い友情で結ばれている。野島は大宮のいとこの友人の杉子を熱愛し、大宮に助力を願うが、大宮に心惹かれる杉子は野島の愛を拒否し、パリに去った大宮に愛の手紙を送る。野島は失恋の苦しみに耐え、仕事の上で大宮と決闘しようと誓う――青春時代における友情と恋愛との相克をきめこまかく描き、時代を超えて読みつがれる武者小路文学の代表作。―アマゾンより
もうね、本当にこのあらすじの通りです。というかあらすじ全部書いていいわけ?え?と思いつつアマゾンから引用すると決めているので(面倒なだけ)。こんな有名なのはみんな読んだことあるかもしれんですね。実は私、最近読んだけど二度目。一回目は大学の授業の関係で読みました。その時は大宮カッコいいな!え!と思ったけど、今回はみんな自分勝手だなほんと、と思いました。恋愛って本当に、自分が幸せになるためのものなのだろうかと思う。よくわからんです。私の恋愛観っていうか、そんなものが育むほど恋愛ってものをしてきたことがないから、なんつうかわかんないんだけど、みんなが自分勝手で愚かに成り下がってしまうというのなら、そんなものこの世から消えろと思うが、しかし、それがあるからこそみんな生き生きしてるんだろうなあっていうか。友達と「友情」の感想を話していたときに、夏目漱石の「こころ」と同じ構図だねなんて話していたんだけど。ただ、この「友情」は「友情」って名前がついている通り、私はあくまで「友情」がメインだと思う。野島は杉子を好きになって、大宮に相談するけど、実は大宮も杉子のことが好きで、でも、そのことをおくびにも出さない。それに引け目を感じこそすれ、野島へのことを考えてなんと海外へも飛んでしまう。最後の最後で野島を裏切るようなことになってしまうけれど、ちゃんと、大宮なりにけじめをつけていて、野島もそれを受け入れていて、そこにはやっぱり大宮と杉子の間の愛情よりも、大宮と野島の友情が確固として存在しているのと感じた。なんとなく、私の中で「こころ」はKと先生の張り合いに御嬢さんが道具として登場してきた感じが否めなかったので、やっぱり同じ構図でも(まあ書きたいことも違ったとしても)、作者によるのなあと思った。し、武者小路はきっとすごくいい人だ。真面目で。

***

そんな感じです。今は志賀直哉の短編集を読んでいるのでまた感想書きます。

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2015/01/18  「乳と卵」感想
「乳と卵」川上未映子著/文春文庫
娘の緑子を連れて豊胸手術のために大阪から上京してきた姉の巻子を迎えるわたし。その三日間に痛快に展開される身体と言葉の交錯!――amazonより
最後の一文いらないんじゃないのこのあらすじ…?と思う。のであった。
前から、金原ひとみはよく読んでいて、金原ひとみが好きな人なら川上未映子も好きだろうなと思う。つまり、女、ということをいやというほど表にだしてぐいぐい押してくる。今や結構主流になっているかもしれない。アマゾンのレビューで、いかにも芥川賞選考委員が好きそうだとかなんだとか書いてあったけどまさしくそういう感じがありました。豊胸に固執する巻子と、そんな母に心を開けなくなっていく緑子。その二人をどこかぼうっと見つめる巻子の妹。基本的に妹の視線で話が進むけど、女性なら結構「はあはあ」と思うところがあるんだと思う。男の人はこういうのを読んでどう思うだろう?
色んな方面から、といって、実は一方向のみの、女へのアプローチ。それはもちろん女から女へのアプローチで、視野が狭いようで実はそれがすべてだったりする。なんかうまく言えないな。
女、ということは、どういうことだろう。女、である、ということ、たとえばそれは、胸がある、化粧をする、股間には何もない、とか、生理があって、つまりそれは子どもを産む構造が体に備わっているということ。だ。巻子は、胸が小さくて、豊胸に固執しているけれども、それって何のためだろうと思う、が、巻子自身も、もうとらわれすぎていてよくわかってないのかもしれない。でも、なんか、わかるんだな。何のためって言われれも、それはもう、なんだ、自分のためでしかないというか、自分の「女」という性のため、でしかない、というか。
そういう、「女」という部分に固執する母に緑子は嫌悪感を感じていて、言葉を発さない。何も言えない。自分だって女なのに、女という生き方がまだ飲み込めない、の、かもしれんのだけども、いやもう上手く言えないな。うん。
女性作家が女性を描くと、どうも因縁めいたものになってしまうよね。リアルすぎて、もうリアルじゃなくなってしまうというかな。女のくせに女をけなす。女を憎む。でもその裏側は、女という性を愛している。女としての生きにくさを愛しているんだろう。不思議なのは、男性作家で男性のことをこうもこき下ろす話ってないんじゃないかって思うよ。そういうところで、女性は愛情深いのかもしれないね。

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2015/01/12  「金閣寺」・「雪国」・「その女アレックス」感想
年末ぐらいから、友人と課題図書を決めて、読んだら感想を言い合わない?というのをやっていて、12月は「金閣寺」、先日は「雪国」と読みました。せっかくならばブログにもちゃんと感想を残しておこう~と思って、書く次第です。あと、気になってたミステリの「その女アレックス」も読了したのでその感想も。ネタバレはしません。ミステリなので。

◆「金閣寺」三島由紀夫著/新潮文庫◆
一九五〇年七月一日、「国宝・金閣寺焼失。放火犯人は寺の青年僧」という衝撃のニュースが世人の耳目を驚かせた。この事件の陰に潜められた若い学僧の悩み――ハンディを背負った宿命の子の、生への消しがたい呪いと、それゆえに金閣の美の魔力に魂を奪われ、ついには幻想と心中するにいたった悲劇……。31歳の鬼才三島が全青春の決算として告白体の名文に綴った不朽の金字塔。(Amazonより)
ということで、ほんとに有名ですよね。この年までちゃんと読んだことがなかったので読んでみようと思い至りまして。ただ、三島由紀夫って聞いて絶対に途中であきらめてしまいそうなので友人も巻き込むことにして。
もともと、中学生のときに全国模試のテストで出たんですね。どのシーンだったかは忘れたけど「金閣寺」が出て、全然わかんなくて(笑)読み終わっても思うけど、中学生に解かせる問題じゃないだろと思うんだけど。
主人公・溝口は、病弱な父の縁故で金閣寺の住職にお世話になっている学生。吃音が原因で引っ込み思案な性格で、外の世界とのつながりが全然持てない(と言い切ってしまうのはちょっと乱暴かもしれないけどもうこれでいいよ)。父が金閣寺を美しい、と言っていた影響もあって、溝口も金閣寺の(本人の妄想の産物でもあるけど)美しさに取りつかれて、最初は美しさに魅了されてるんだけど、そのうちに憎々しくなってきて燃やしてしまおう、と思う。
というかなりざっくりな。話です。文章が美しいとか、金字塔とか言うけれど、私はやっぱり三島由紀夫のナルシシズム溢れる文章は好きになれないなと思いました。すごいよ。そういう意味では。あと、冒頭で、溝口が中学生ぐらいのときに、中学を卒業して士官学校に通っている先輩が軍制服で中学に遊びにくるところがあるんだけど、そのシーンは最高に綺麗だった。で、たぶんそのシーンがほんとに溝口の総てだと思う。
溝口には、二人の、対照的な友人というか同年代の男が出てきて、一人は鶴川くん、彼は溝口と同様に金閣寺に一緒に住んで修行している見習いさん。彼はとっても純朴でまっすぐで、溝口曰く、鶴川は自分の陰の部分を陽へと翻訳してくれる存在。つまりなんだろうなあ、ほんとにまっすぐで、溝口は自分にはない鶴川の明るさを愛していた。もう一人は柏木。陰陽のスケールを用意して、その真ん中に溝口を置いたとしたら、陽の一番端っこは鶴川で、その反対の端は柏木ってな具合で、陰陽どっちにも振り切りきれない溝口に比べて柏木は悪い奴。だけど、柏木は、だからこそ中途半端な溝口とは違い、金閣寺なんか燃やそうとしなかったんだろうなあ。
お話の主題は「認識と行動、どちらを変えることでどちらが動くか」ということだと、私は思ったけれど、もうこのちっこい脳みそでは限界だったよ。他のブログをちまちま読んだりして、はあ、なるほど、と、人の脳みそに頼るしかできませんでした。

◆「雪国」川端康成著/角川文庫◆
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。「無為の孤独」を非情に守る青年・島村と、雪国の芸者・駒子の純情。魂が触れあう様を具に描き、人生の哀しさ美しさをうたったノーベル文学賞作家の名作。(Amazonより)
これもそのまんまですね(笑)でも、やっぱり哲学的にあふれた金閣寺よりは、こっちの方が断然好きでした。文章がまず読みやすいので。ちなみに一緒に読んでいる友人は金閣寺の方が好きみたいだったけど。
主人公・島村は無為徒食の身。妻子があれどもあっちにふらふら~こっちにふらふら~。そんな彼が雪国の温泉場で関係を持っている芸者の駒子。初めてその温泉場に行ったときに、まだ芸者ではなかったけれども村中の温泉芸者が出払っているため、踊の師匠の家に身を寄せている駒子を呼んだ島村。駒子の美しさや清潔さを見て、君とは関係を持たないでいい友人でいたいから、他に芸者を紹介してくれ(抱く用の)とか言うんだけど、結局駒子と関係を持ってしまい、その次の日に島村は帰ってしまう。そして、今度は温泉場がしんと雪に包まれる季節に島村がまた駒子のもとを訪れる。
これは本当に男女の関係がよく表れているお話。です。物語の目線は島村で、なんかもうね本当に島村にイライラするんですよね。駒子は、本当に島村のことが好きで、だけど島村はそういう気がないこともわかっているから惹かれないようにしている。でも、やっぱり好きだ、という情熱がほとばしっていく。のにも関わらず、それを目の当たりにしているのにもかかわらず、島村は駒子を慰めるでもなし、情熱を向けるでもなし。自分の所為でもがく駒子のことを「徒労」とすら言う。島村にとって、駒子は「徒労」であるからこそ美しいという風に思っている。そういう駒子を好きな自分を愛している。駒子はそういう島村に気付いていて、またそういうダメ男が好きな女がいるんですよね。ちなみに、駒子の踊の師匠の息子の彼女というのが出てくるんだけど(長い)、その子がまたすごく、いつも真面目でね。島村はその子のことも気になるんですよね。駒子はそれにも気づいていてかたくなに彼女の情報を島村には教えない。それがまた哀れ。なんです。でも、駒子かわいい。
友人と話していて、女性は男性よりも愛することに長けているんだろうという話になりました。そして友人が一言、「女性がどれだけ愛しても、男性は下手だからうまく愛しかえせないんだよ。男は愛しがいがないから」と。名言だな。

◆「その女アレックス」ピエール・ルメートル著/文春文庫◆
おまえが死ぬのを見たい―男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…しかし、ここまでは序章にすぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。イギリス推理作家協会賞受賞作。(Amazonより)
ここまで二作純文学からのがらりとミステリ。この小説、このミスとか早川書房とかのミステリ系のランキング総なめだったみたいです。あんまり得意じゃないんですけどね。読んでみました。
三部構成で、二部までは主人公(?)の警部であるカミーユたち視点と、謎の女・アレックス視点でころころ変わるんだけど、二部のラストで「!?」ってなって、でもあと一部あるけど……ってなりますが、でもまあちゃんとまとまってて。うんうん。
監禁されて、監禁された場所とか方法を探る、じゃないんですよ。監禁事件はほんの足がかりで、被害者であるはずの女・アレックスが実は…となっていく様、とか、無関係なようで実は全部繋がっていたりする。まあミステリの常套手段っちゃ手段ですね。だも、やっぱりおもしろい。
なんだけど、言うほど大逆転繰り返すかな!?と思いました。というのも、年末にデヴィット・フィンチャーの「ゴーン・ガール」見ちゃったので、あれ見た人はちょっと既視感あるかもしれない。これ壮絶なネタバレ?でもないと思うけど。でも、私しばらくはあの「ゴーンガール」の衝撃に勝るものはないと思っているよ。すごかったよ。
で、そうそう、先に「金閣寺」とか「雪国」読んでいた身としてはミステリすげー読みやすい!ということ。すごいぜ。どんどん話が進む。すごい。すごいよ。という感じ。もうめたくそですね。

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2014/12/07  「三十歳」・「ツーピース」感想
今日で、第二回大阪文学フリマと第十九回文学フリマの本を読み終わりました。
実をいうと第十八回文学フリマの本はまだ読めてないのか三冊ほどあって、これもまたゆっくり読みたい。

「三十歳」青い花Old Girls著/A6判/400円/208頁
帰ってきた青い花第七弾です。一番新しい本です。
今回は初めてのテーマ誌ということで、「三十歳」をキーワードに、いろいろな話ができました。
・「棺に入る」…芳野笙子
・「ミシガンモーニング」…詩子
・「つきのひかり」…灯子
・「アイム・オン・マイ・ウェイ」…篠洲ルスル
・「祝辞」…白江翠

――文学フリマwebカタログより。
青い花さんは第十八回文学フリマのときに出会って、まず装丁から素敵すぎて。本当に売り物のようなんですよ(これ毎回言ってるけど、書店に並んでそうっていう意味です)。素敵。その時も何冊か買わせていただいたんだけど、どハマりしまして。実は上で言ってる読めてない三冊っての内二冊が青い花さんなんだけど、というのはもったいなくて読めず、そのまま今回の文学フリマがきてしまったわけで、装丁もまたかわいらしいのでぜひこれは!と思っていそいそと購入させていただきました。
とりあえず、買ってよかった。本当に、本当に完成度が高いと思います。私なんぞがこんなことを言うのはなんかエラそうですが、本当にはずれがなくって純文学好きな人は好きだと思う。美辞麗句が並ぶようなものではなくて、日常を切り取るのが本当にお上手です。文学フリマの小説を見ていると、テーマ性というものが強く押し出されているように思えて、それに共感できなければずっとついて行けない、という感じが私はしているんだけど(それがけっこう鼻につく)、青い花さんの書かれるものにはそういうのが一切ない。テーマ性がないってことじゃなくて、なんだろう、文章に滑り込ませるのが上手いんでしょう。
特に好きなのが芳野さんの「棺に入る」、めちゃくちゃ好き。大学院生をしつつ非常勤講師をしてなんとか生計をたててる桐子。その桐子に「棺を買いなさい」と勧めてくる得体のしれない先祖の声。先祖は飽きずにその話ばっかりしてくる。スリッパに憑いたり、本の表紙に憑いたり、果てはジャガイモに憑いたり。正体があるのかないのか、桐子にずっとそう語る先祖。
先祖は死についてすごい語ってくるんだけど、なんか可愛いんですよね。桐子のいなし方も素敵。でも別に「死」についてのお話じゃないとこがいいんです。そうだろうけど、そうじゃない。
あと、篠洲ルスルさんの「アイム・オン・マイ・ウェイ」も好きだったな。シンガーソングライターの西村幸重(ゆきえ)と、その周りの人間模様のお話。お話の中で十年経過するんだけど、自然な流れでよかった。それぞれの成長や破たんの仕方っていうのがよかったなと思います。前回読んだ「春を待つ青い花」にもこの西村幸重のお話があって、時代設定が(私の勘違いかもしれないけど)フォークミュージックがはやった時代のお話っぽくて(70年代とか?)、ちょっと臭いなと思ってたんだけど、今回読んでてよかったな、と思った。結構な力作だったと思う。
外れないから、また、ほしくなる。これからも楽しみなサークルさんです。いやほんと。久しぶりに小説読んだ~って気になる。

「ツーピース」霜月みつか著/A5/500円
「男女/少女と少女/少年と少年」の”かけがえのない相手への愛”を取り扱った短編集
・1LDKプラネット
顔にコンプレックスを持ち、クラスで無視されている努は、
体型にコンプレックスを持ち、努以上にクラスでいじめられている志津香に対し、
ぼくらは同じ惑星の出身とだという思い込みからアプローチをし、
恋愛関係になる。
志津香は努のためにとダイエットを始める。
7年かけて20キロ痩せていった志津香は美しい女性になった。
そのことによってふたりの関係は少しずつ軋み始めた。
・イミテーションズブルー
男になりたいあすかと、男のあすかを愛していたい梓。
高校2年生になり、あすかは少しずつ美しい女性になっていくことに
梓は気づいてしまい、同時期に絵のスランプになる。
少女と少女のふたりだけの秘密の話。
・シーアネモネ
高校の入学式、宝良はじぶんによく似たあたえを見つける。
ふたりは同じクラスの隣の席で、すぐに仲良くなる。
じぶんと似ているあたえを好きになってしまったことの葛藤。
次第にあたえが似ていない事実が明かされていく。
思春期の少年たちの青春恋愛小説。
――文学フリマwebカタログより。
霜月さんのご本は第十八回文学フリマで「雨の日、テトラポッドで。」を、第二回文学フリマで「バンドバンドバンド」を購入させてもらって、ほしいな~と思っていた「ツーピース」を今回購入。
うーん、どのお話も瑞々しい。霜月さんの文章が瑞々しいのは、ご本人が文章や物事にたいしていつも新鮮な気持ちを持っているからなのかなあ、となんとなく思っています(ブログとか勝手に読んでる)。ご本人曰く、ご自分の本は中々手に取ってもらえないようなテーマだから、と言うけれど、そんなことなくて普遍的っちゃあ普遍的だよな、と思う。
かけがえのない人、とか、この人でないといけない、とか、そういうのっていくつになっても持ち続けるかもしれない。表現の仕方や形が変わっても、やっぱり自分を一番に理解してくれて、一番に思ってくれる人。それに、自分も誰かのことをそう言う風に思いたい。二人で一つ、とか、比翼連理じゃないけど、それってすごく普遍的だと思うんだよな。
テーマ上、構成として、まあ平たく言ってしまえば同性愛になってしまっても、そのいやらしさってみつかさんの文章を読んでいるとあんまり思わない。ひたひたしてる文章だからだろうかな。それに、登場人物たちが皆若いんです。だから余計に、みずみずしくて痛々しいんだろうな。大人になる瞬間とか、子どもであることを知る瞬間とかいろいろありつつも、私たちは結果的にはよくもわるくも成長してるんだろうね。あんまり関係ないけどそんなことを思った。
実は今でも後悔してることがあって、初めてみつかさんに話しかけたときに、「私もBL書いてるんです、好きなんです」って言ったんだけど、みつかさんが書いているのはBLじゃなくて、男の同士という点ではBLなんだけど、そういうセオリーのものではないだっていう、失礼なことを言ったなと思い……反省……私が書いているのはBLで、BLの外の恋愛を描きたいけど、でもそれはやっぱり私の中ではBLでしかありえないんだけど、みつかさんはそうじゃないんだなっていう、なんかほんとに失礼だったなと…反省…(土に埋まりつつ)。

***

つうことで読書もけりつきました。いやまだ読んでないのたくさんあるからじわじわ読みますが、ちゃんと自分も書きたいと思うもの書けたらなあ。

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2014/12/07  「何処へも行けない」・「羽ばたき」・「空にかける橋」感想
今日も今日とて感想。

「何処へも行けない」初川遊離著/A6判/500円
『郁さんは僕を日向とは呼ばない。自分でつけた名前のくせに。』
都心から少し離れた、商店街のある下町で、ひっそりと身を寄せ合う二人。九歳年の離れた彼らは、親子でもなく、兄弟でもない。彼らを結ぶ繋がりは彼らの他に誰も知らない、ーー閉じた世界に逃げ込んだ二人の穏やかな逃避行を描く、文庫サイズの中編小説。
――文学フリマウェブカタログより。
ウェブカタログで気になったので購入しました。買った後に気付いたのだけど、先日感想を書いた東堂冴さんという方の本の解説を書かれているのが初川さんで、今回のこの本の解説を東堂さんが書かれていました。そういやブースでも、東堂さんの本が委託されていたわ…と後から思い出す。
文章は読みやすかったです。内容はともすればヘビーなはずで、語り口も軽いわけじゃないんだけど、その重さは感じさせない感じ。ん?なんか変だな。いやでもそんな感じ。
あらすじの通り、丹精な顔立ちの郁(かおる)と日向(ひなた)は二人暮らし、だけど、二人の関係は全然明かされない。あと、郁の仕事場の後輩である伊豆野と、取引先(というとちょっと変だな)の藤沢、の四人がメイン。あと、郁の高校時代の彼女。私はこの彼女が好きだった。というか伊豆野はメインとくくっていいかわからないし、私もこいつ当て馬的かと思ったら、最後の最後で大切なメタファー的な(使ってみたかっただけ)。ちなみに彼女以外みんな男なんだけど、書いてるのが女性だからか、むさくるしさとか、ちょっと現実味がないような気もしました。別にそこがメインじゃないんだけど。「兄」とか「弟」というものが根幹にあるので、どうしても男が多いんですね。「弟」は「兄」にはなれないし、「兄」は「弟」にはなれない。でも、「弟」は「兄」がいるから「弟」で、「弟」は「兄」がいるから「弟」たりえる。メインの四人の中で、唯一このルールにのっとってるのは伊豆野だけ。だから、彼が最後に、郁を叱る人に選ばれたのかもしれない。でも、郁にとって、やっぱり伊豆野は兄じゃないんだよね。
ちょこちょこ、本編と関わるように短い挿話があるんだけど、この目線が誰なのか、どういう風に本編と関わるのかがちょっとした謎解き気分。場面の切り替わり方がちょっと読みづらかった気もしないでもない。女の子が主人公のお話読んでみたいなーと思いました。

「羽ばたき」ほしおさなえ/A6判/1,000円
「空にかける橋」ほしおさなえ/A6判/900円
この方、職業作家さんなんですね。あ、もしかして、と思ってなんか知ってた気がしていたけれど、ささやななえこ、と、ほしのこえ、が頭の中で合成されていました。
ほんで、「羽ばたき」は小説の短編集。「空にかける橋」は100の詩を集めた詩集でした。

「羽ばたき」→かつて同人誌「ウルトラ」「明空」および個人サイトに発表していた短編小説を集めたものです。 <収録作品> 直径1・5メートルの眼球、水爪、フタバハウス、グジグジ、魚のいない街、穴あきドロップ、羽ばたき、石をつなぐ男――文学フリマウェブカタログより。
「羽ばたき」を読んでいたら、あんまり詳しくないんだけど安倍公房を思い出しました。赤い女だったかな、繭だったかな…あ、赤い繭。それを読んだときの気持ちになりました。
はっきり名言されない関係性、ちょっと目を離すとすぐにどこかに迷い込んで行ってしまう。主人公たちはまるで意志があるのかないのか、ミクロなのかマクロなのか、うーん、と頭をかかえつつも、でも、ところどころの言葉が好きでした。たとえば、湿気がありすぎて産毛が目いっぱい生えてしまった空気、とか、愛という字は角ばっかりで触ったら痛そうとか(原文ママではないですけど)、感覚的な比喩が良かった。全体的に、自分が自分に入り込む、他者が自分に入り込む、とか、自分の輪郭がなくなるとか、ということが多かったように思います。自分は自分自身を自分で見ることは、決してできない、ってことかもしれない。そこには他者が必要なんだけど、他者が介在してきたことによって自分はもはや介在する前の自分ではないのかもしれない。
穴(肌とかにぷつっと開いているような穴)から自分ではないものが入ってきたり、吸い込まれたりする、という表現が多くてちょっと不気味でした。いい意味で。

「空にかける橋」→むかしサイトに公開していた「the bridge to the blue sky」という短い詩100編の連作を改題し、文庫サイズの詩集にしました。装画は美術作家の大槻香奈さん。――同じく文学フリマウェブカタログより。
こちらは詩集。五行ぐらいの詩が100編。言葉の選び方が清新で青空の海鳴り(まったくおかしいけどそういう感じ)が聞こえている感じがした。詩は不思議ですね。自分ではあんまり書けないせいかもしれない。
あとがきが載っていて、そこに、
「世界は大きいのです。その衝撃で、言葉がふだんのつながりからほぐれ、漂い出しました。その断片をつなぎあわせたのがこの作品たちでした。夢は砕かれた言葉の欠片が集まったようなものと聞きます。(中略)夢の終わりに、わたしたちがたどり着く場所。わたしはその記憶を書き留めたかったのかもしれません」
とあって、あ、きっとこれがすべてなんだな、と思いました。このあとがきは「空にかける橋」にあったものだけど、「羽ばたき」にも共通するんじゃないかな。

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今日はめちゃくちゃ寒かったからびっくりした。職場で一人仕事をしました。職場だから当たり前だ。

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