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2014/12/07  「三十歳」・「ツーピース」感想
今日で、第二回大阪文学フリマと第十九回文学フリマの本を読み終わりました。
実をいうと第十八回文学フリマの本はまだ読めてないのか三冊ほどあって、これもまたゆっくり読みたい。

「三十歳」青い花Old Girls著/A6判/400円/208頁
帰ってきた青い花第七弾です。一番新しい本です。
今回は初めてのテーマ誌ということで、「三十歳」をキーワードに、いろいろな話ができました。
・「棺に入る」…芳野笙子
・「ミシガンモーニング」…詩子
・「つきのひかり」…灯子
・「アイム・オン・マイ・ウェイ」…篠洲ルスル
・「祝辞」…白江翠

――文学フリマwebカタログより。
青い花さんは第十八回文学フリマのときに出会って、まず装丁から素敵すぎて。本当に売り物のようなんですよ(これ毎回言ってるけど、書店に並んでそうっていう意味です)。素敵。その時も何冊か買わせていただいたんだけど、どハマりしまして。実は上で言ってる読めてない三冊っての内二冊が青い花さんなんだけど、というのはもったいなくて読めず、そのまま今回の文学フリマがきてしまったわけで、装丁もまたかわいらしいのでぜひこれは!と思っていそいそと購入させていただきました。
とりあえず、買ってよかった。本当に、本当に完成度が高いと思います。私なんぞがこんなことを言うのはなんかエラそうですが、本当にはずれがなくって純文学好きな人は好きだと思う。美辞麗句が並ぶようなものではなくて、日常を切り取るのが本当にお上手です。文学フリマの小説を見ていると、テーマ性というものが強く押し出されているように思えて、それに共感できなければずっとついて行けない、という感じが私はしているんだけど(それがけっこう鼻につく)、青い花さんの書かれるものにはそういうのが一切ない。テーマ性がないってことじゃなくて、なんだろう、文章に滑り込ませるのが上手いんでしょう。
特に好きなのが芳野さんの「棺に入る」、めちゃくちゃ好き。大学院生をしつつ非常勤講師をしてなんとか生計をたててる桐子。その桐子に「棺を買いなさい」と勧めてくる得体のしれない先祖の声。先祖は飽きずにその話ばっかりしてくる。スリッパに憑いたり、本の表紙に憑いたり、果てはジャガイモに憑いたり。正体があるのかないのか、桐子にずっとそう語る先祖。
先祖は死についてすごい語ってくるんだけど、なんか可愛いんですよね。桐子のいなし方も素敵。でも別に「死」についてのお話じゃないとこがいいんです。そうだろうけど、そうじゃない。
あと、篠洲ルスルさんの「アイム・オン・マイ・ウェイ」も好きだったな。シンガーソングライターの西村幸重(ゆきえ)と、その周りの人間模様のお話。お話の中で十年経過するんだけど、自然な流れでよかった。それぞれの成長や破たんの仕方っていうのがよかったなと思います。前回読んだ「春を待つ青い花」にもこの西村幸重のお話があって、時代設定が(私の勘違いかもしれないけど)フォークミュージックがはやった時代のお話っぽくて(70年代とか?)、ちょっと臭いなと思ってたんだけど、今回読んでてよかったな、と思った。結構な力作だったと思う。
外れないから、また、ほしくなる。これからも楽しみなサークルさんです。いやほんと。久しぶりに小説読んだ~って気になる。

「ツーピース」霜月みつか著/A5/500円
「男女/少女と少女/少年と少年」の”かけがえのない相手への愛”を取り扱った短編集
・1LDKプラネット
顔にコンプレックスを持ち、クラスで無視されている努は、
体型にコンプレックスを持ち、努以上にクラスでいじめられている志津香に対し、
ぼくらは同じ惑星の出身とだという思い込みからアプローチをし、
恋愛関係になる。
志津香は努のためにとダイエットを始める。
7年かけて20キロ痩せていった志津香は美しい女性になった。
そのことによってふたりの関係は少しずつ軋み始めた。
・イミテーションズブルー
男になりたいあすかと、男のあすかを愛していたい梓。
高校2年生になり、あすかは少しずつ美しい女性になっていくことに
梓は気づいてしまい、同時期に絵のスランプになる。
少女と少女のふたりだけの秘密の話。
・シーアネモネ
高校の入学式、宝良はじぶんによく似たあたえを見つける。
ふたりは同じクラスの隣の席で、すぐに仲良くなる。
じぶんと似ているあたえを好きになってしまったことの葛藤。
次第にあたえが似ていない事実が明かされていく。
思春期の少年たちの青春恋愛小説。
――文学フリマwebカタログより。
霜月さんのご本は第十八回文学フリマで「雨の日、テトラポッドで。」を、第二回文学フリマで「バンドバンドバンド」を購入させてもらって、ほしいな~と思っていた「ツーピース」を今回購入。
うーん、どのお話も瑞々しい。霜月さんの文章が瑞々しいのは、ご本人が文章や物事にたいしていつも新鮮な気持ちを持っているからなのかなあ、となんとなく思っています(ブログとか勝手に読んでる)。ご本人曰く、ご自分の本は中々手に取ってもらえないようなテーマだから、と言うけれど、そんなことなくて普遍的っちゃあ普遍的だよな、と思う。
かけがえのない人、とか、この人でないといけない、とか、そういうのっていくつになっても持ち続けるかもしれない。表現の仕方や形が変わっても、やっぱり自分を一番に理解してくれて、一番に思ってくれる人。それに、自分も誰かのことをそう言う風に思いたい。二人で一つ、とか、比翼連理じゃないけど、それってすごく普遍的だと思うんだよな。
テーマ上、構成として、まあ平たく言ってしまえば同性愛になってしまっても、そのいやらしさってみつかさんの文章を読んでいるとあんまり思わない。ひたひたしてる文章だからだろうかな。それに、登場人物たちが皆若いんです。だから余計に、みずみずしくて痛々しいんだろうな。大人になる瞬間とか、子どもであることを知る瞬間とかいろいろありつつも、私たちは結果的にはよくもわるくも成長してるんだろうね。あんまり関係ないけどそんなことを思った。
実は今でも後悔してることがあって、初めてみつかさんに話しかけたときに、「私もBL書いてるんです、好きなんです」って言ったんだけど、みつかさんが書いているのはBLじゃなくて、男の同士という点ではBLなんだけど、そういうセオリーのものではないだっていう、失礼なことを言ったなと思い……反省……私が書いているのはBLで、BLの外の恋愛を描きたいけど、でもそれはやっぱり私の中ではBLでしかありえないんだけど、みつかさんはそうじゃないんだなっていう、なんかほんとに失礼だったなと…反省…(土に埋まりつつ)。

***

つうことで読書もけりつきました。いやまだ読んでないのたくさんあるからじわじわ読みますが、ちゃんと自分も書きたいと思うもの書けたらなあ。

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