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2015/01/12  「金閣寺」・「雪国」・「その女アレックス」感想
年末ぐらいから、友人と課題図書を決めて、読んだら感想を言い合わない?というのをやっていて、12月は「金閣寺」、先日は「雪国」と読みました。せっかくならばブログにもちゃんと感想を残しておこう~と思って、書く次第です。あと、気になってたミステリの「その女アレックス」も読了したのでその感想も。ネタバレはしません。ミステリなので。

◆「金閣寺」三島由紀夫著/新潮文庫◆
一九五〇年七月一日、「国宝・金閣寺焼失。放火犯人は寺の青年僧」という衝撃のニュースが世人の耳目を驚かせた。この事件の陰に潜められた若い学僧の悩み――ハンディを背負った宿命の子の、生への消しがたい呪いと、それゆえに金閣の美の魔力に魂を奪われ、ついには幻想と心中するにいたった悲劇……。31歳の鬼才三島が全青春の決算として告白体の名文に綴った不朽の金字塔。(Amazonより)
ということで、ほんとに有名ですよね。この年までちゃんと読んだことがなかったので読んでみようと思い至りまして。ただ、三島由紀夫って聞いて絶対に途中であきらめてしまいそうなので友人も巻き込むことにして。
もともと、中学生のときに全国模試のテストで出たんですね。どのシーンだったかは忘れたけど「金閣寺」が出て、全然わかんなくて(笑)読み終わっても思うけど、中学生に解かせる問題じゃないだろと思うんだけど。
主人公・溝口は、病弱な父の縁故で金閣寺の住職にお世話になっている学生。吃音が原因で引っ込み思案な性格で、外の世界とのつながりが全然持てない(と言い切ってしまうのはちょっと乱暴かもしれないけどもうこれでいいよ)。父が金閣寺を美しい、と言っていた影響もあって、溝口も金閣寺の(本人の妄想の産物でもあるけど)美しさに取りつかれて、最初は美しさに魅了されてるんだけど、そのうちに憎々しくなってきて燃やしてしまおう、と思う。
というかなりざっくりな。話です。文章が美しいとか、金字塔とか言うけれど、私はやっぱり三島由紀夫のナルシシズム溢れる文章は好きになれないなと思いました。すごいよ。そういう意味では。あと、冒頭で、溝口が中学生ぐらいのときに、中学を卒業して士官学校に通っている先輩が軍制服で中学に遊びにくるところがあるんだけど、そのシーンは最高に綺麗だった。で、たぶんそのシーンがほんとに溝口の総てだと思う。
溝口には、二人の、対照的な友人というか同年代の男が出てきて、一人は鶴川くん、彼は溝口と同様に金閣寺に一緒に住んで修行している見習いさん。彼はとっても純朴でまっすぐで、溝口曰く、鶴川は自分の陰の部分を陽へと翻訳してくれる存在。つまりなんだろうなあ、ほんとにまっすぐで、溝口は自分にはない鶴川の明るさを愛していた。もう一人は柏木。陰陽のスケールを用意して、その真ん中に溝口を置いたとしたら、陽の一番端っこは鶴川で、その反対の端は柏木ってな具合で、陰陽どっちにも振り切りきれない溝口に比べて柏木は悪い奴。だけど、柏木は、だからこそ中途半端な溝口とは違い、金閣寺なんか燃やそうとしなかったんだろうなあ。
お話の主題は「認識と行動、どちらを変えることでどちらが動くか」ということだと、私は思ったけれど、もうこのちっこい脳みそでは限界だったよ。他のブログをちまちま読んだりして、はあ、なるほど、と、人の脳みそに頼るしかできませんでした。

◆「雪国」川端康成著/角川文庫◆
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。「無為の孤独」を非情に守る青年・島村と、雪国の芸者・駒子の純情。魂が触れあう様を具に描き、人生の哀しさ美しさをうたったノーベル文学賞作家の名作。(Amazonより)
これもそのまんまですね(笑)でも、やっぱり哲学的にあふれた金閣寺よりは、こっちの方が断然好きでした。文章がまず読みやすいので。ちなみに一緒に読んでいる友人は金閣寺の方が好きみたいだったけど。
主人公・島村は無為徒食の身。妻子があれどもあっちにふらふら~こっちにふらふら~。そんな彼が雪国の温泉場で関係を持っている芸者の駒子。初めてその温泉場に行ったときに、まだ芸者ではなかったけれども村中の温泉芸者が出払っているため、踊の師匠の家に身を寄せている駒子を呼んだ島村。駒子の美しさや清潔さを見て、君とは関係を持たないでいい友人でいたいから、他に芸者を紹介してくれ(抱く用の)とか言うんだけど、結局駒子と関係を持ってしまい、その次の日に島村は帰ってしまう。そして、今度は温泉場がしんと雪に包まれる季節に島村がまた駒子のもとを訪れる。
これは本当に男女の関係がよく表れているお話。です。物語の目線は島村で、なんかもうね本当に島村にイライラするんですよね。駒子は、本当に島村のことが好きで、だけど島村はそういう気がないこともわかっているから惹かれないようにしている。でも、やっぱり好きだ、という情熱がほとばしっていく。のにも関わらず、それを目の当たりにしているのにもかかわらず、島村は駒子を慰めるでもなし、情熱を向けるでもなし。自分の所為でもがく駒子のことを「徒労」とすら言う。島村にとって、駒子は「徒労」であるからこそ美しいという風に思っている。そういう駒子を好きな自分を愛している。駒子はそういう島村に気付いていて、またそういうダメ男が好きな女がいるんですよね。ちなみに、駒子の踊の師匠の息子の彼女というのが出てくるんだけど(長い)、その子がまたすごく、いつも真面目でね。島村はその子のことも気になるんですよね。駒子はそれにも気づいていてかたくなに彼女の情報を島村には教えない。それがまた哀れ。なんです。でも、駒子かわいい。
友人と話していて、女性は男性よりも愛することに長けているんだろうという話になりました。そして友人が一言、「女性がどれだけ愛しても、男性は下手だからうまく愛しかえせないんだよ。男は愛しがいがないから」と。名言だな。

◆「その女アレックス」ピエール・ルメートル著/文春文庫◆
おまえが死ぬのを見たい―男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…しかし、ここまでは序章にすぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。イギリス推理作家協会賞受賞作。(Amazonより)
ここまで二作純文学からのがらりとミステリ。この小説、このミスとか早川書房とかのミステリ系のランキング総なめだったみたいです。あんまり得意じゃないんですけどね。読んでみました。
三部構成で、二部までは主人公(?)の警部であるカミーユたち視点と、謎の女・アレックス視点でころころ変わるんだけど、二部のラストで「!?」ってなって、でもあと一部あるけど……ってなりますが、でもまあちゃんとまとまってて。うんうん。
監禁されて、監禁された場所とか方法を探る、じゃないんですよ。監禁事件はほんの足がかりで、被害者であるはずの女・アレックスが実は…となっていく様、とか、無関係なようで実は全部繋がっていたりする。まあミステリの常套手段っちゃ手段ですね。だも、やっぱりおもしろい。
なんだけど、言うほど大逆転繰り返すかな!?と思いました。というのも、年末にデヴィット・フィンチャーの「ゴーン・ガール」見ちゃったので、あれ見た人はちょっと既視感あるかもしれない。これ壮絶なネタバレ?でもないと思うけど。でも、私しばらくはあの「ゴーンガール」の衝撃に勝るものはないと思っているよ。すごかったよ。
で、そうそう、先に「金閣寺」とか「雪国」読んでいた身としてはミステリすげー読みやすい!ということ。すごいぜ。どんどん話が進む。すごい。すごいよ。という感じ。もうめたくそですね。

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