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どこをみているの
2024/05/17  [PR]
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2015/02/08  マチルダのこと
マチルダは中学からの同級生で、名前は町田というのであだ名がマチルダという。
けれども、なんだかマチルダって言うのは彼の本当の名前のようにも思えるのだった。なぜならマチルダはハーフで(というと国際論だかの教授はダブルだといえという。ハーフというのは血が半分半分って意味でちゃんと混ざってるって意味じゃないっていう)、フルネームは町田トーマスと言って(本当はミドルネームがあるが長くて俺は覚えられない)、オヤジさんがフランスだったかイギリスだったかヨーロッパの生まれで、母さんは生粋の日本人だけれどもオヤジさんの血が濃くでたのか、マチルダは緑の瞳にそばかすつきの白い肌、透けた茶色の髪のを持って生まれてきた。だからマチルダっていう外国っぽいあだ名がついていても何にもおかしくない。中学の英語をサポートしてたアニーというアメリカ人の先生は、マチルダっていうのは女性につける名前だからちょっと変よ、なんて言ってて、だけど俺たちはマチルダはだったし、変なことなんかちっともなかった。たぶんそれは、俺が吉彦って名前だけど、吉子って呼ばれるのと同じような感じで、まあ俺みたいな男を吉子って呼ぶのは変だってことなんだろう。そりゃわかってても、マチルダの見た目はさておいて中身は生粋の日本人で、すごい汚い言葉ばっかり言うし、英語も全く話せなかったもんだから、ギャップがひどくて、本当なら学校中の王子様、なんていう風になってもおかしくなかったのに、中身を知ってる女たちからは随分嫌がられていたもんだった。
マチルダのオヤジさんはさすが外人だからか、町で一番の長身だった。その血を色濃く引いているマチルダも、高校二年のときにぐいぐい伸びて、学校で一番の身長とガタイの持ち主になった。マチルダはみるみるうちにその雰囲気を変えていき、いくら中身が汚くて英語もろくに話せないクソッタレだとわかっていても、色恋沙汰の好きな年代ということもあって、彼はようやっと学校一の王子様になったのだった。マチルダ自身は女たちにもてはやされるのを良く思っていないようだったが、いくら中学から見知っている女たちだとはいえ男たちは羨ましがったし、女たちはいくら中身が汚くてもマチルダの嘘みたいに煌びやかな見た目に夢中になった。

***********

本当は書きたかったのだけれど力尽きました。
BLです。

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2015/02/01  うそつき
うそをつかないで生きよ
誰が言ったのかわかんないけど
チョコレートを三百六十五個食べ散らかしたんだから言葉も出ない
いまキスしたらきっとおいしい
そうでしょう

うそをつかないで生きよ
君が言ったのかしらないけど
エタノールを百八回飲んだんだからいつか死ぬかもしれない
いまハグしたらきっと飛べる
そうでしょう。

べつにいいよ
うそつきでもウォーキングデッドでもきみなんだったらなんでもいい
だってそうでなきゃいけないようにできているんだし

べつにいいよ
犯人でも臆病者でもたとえいばらの道でさえもきみならこえていく
だってそうでもしてきみを守るようにできているんだし

う、そ、つ、き

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2015/01/20  のろい
わたしのこと、きいてくれますか
あなた、そんな目でみないで
わたしのこと、きいてくれますか

たとえば見上げた空が真っ赤だったとしても
たとえばもぐりこんだ森がはげていても
あなた、そんな目でみないで
わたしのことだけ、ちゃんと、目をつむっているように

胸ではじけたサイダーを
あなたの毛穴に流し込んであげましょう
そうしたらたぶん、同じ様になって
青色の星を一個二個、胸に飾ったら
わたしもあなたも透明になって
いろいろなこと、忘れて、傷もふさがるでしょう
たぶんね

わたしのこと、きいてくれますか
あなた、そんな目でみないで
わたしのこと、きいてくれないでもいいから
あなた、そんな目でみないで
わたしだけが、あなたを見ている

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2014/11/30  深夜のホームにて
気付いたらもう、11月だった。で、もう11月が終わる。そんなことあっていいんですか、と佳奈美がぶつくさ言うので祐二はしょうがないだろ、と、お決まりの言葉を言う。祐二さんね、いつもしょうがないだろって言うけど、この世にしょうがないことばっかりだったら私たちどうして生きてると思ってるんです、とまた息巻いた。佳奈美は酒が入ると面倒くさい。どうやっていなしていけばいいか、と思っても、やっぱり出てくる言葉は同じだった。
「しょうがないだろ、だって生きてるんだし」
「そこはしょうがなくない、っていうか、しょうがないのはあんたの口癖でしょうが」
「だってしょうがないだろ。口癖ってお前言ったじゃん」
「あーーー、もうこれ、しょうがないしか言わないんでしょ。そうでしょ。で、しょうがないんだよね、とか、また言うんでしょ。それすらしょうがないっていうんですか。ああ、もうゲシュタルト崩壊してきました。というか、何がしょうがないですか。仕様がないって、何がですか。なんにも、自分で、できないってことですか」
佳奈美、もっと声落として、と、手で彼女の口をふさぐ。終電二本前のホームには、祐二が気にするほど人がいたわけではなかったが、人がまばらに立っているからこそ、喧騒のなさが目立つ。故に、佳奈美の声も高らかに響いてしまうのだった。彼女は口をおさえられたことにはっとしつつ、今度は考えるように目を閉じた。ふと、手のひらにこそばゆさを覚え、佳奈美が祐二の手の匂いを嗅いでいることに気付いた。慌てて手をひっこめる。佳奈美がにやりと笑った。八重歯が覗き、唇が不恰好にめくれ上がる。キスをしてみたいが、噛まれたらいたそうだ。
「かぐなよ匂い」
「しょうがないでしょ」
「なんもしょうがなくないよ。なんでかぐの」
「なんとなく。手のひら、お醤油の匂いしました」
「お前がこぼしたからだよ」
刺身がおいしいという居酒屋に佳奈美を連れて行ったら、彼女は大喜びして生だこだの白子だの金目鯛だのを頼んでいたが、酒がまわるにつれて手元が怪しく、小皿に注ごうと醤油の小瓶を手に取った瞬間にごろりと倒したのだった。幸い、こぼれた量は少量だったが、おしぼりを二人分茶色にするぐらいにはこぼれたので、祐二の手は醤油臭かった。手を洗いに行こうとタイミングを見計らっていたが、酔った佳奈美を一人席においておくことが怖く、結局洗えなかったのだ。
「ふ、しょうがないって言わないんだ」
「なんかダジャレみたいだろ」
「ふ、ふふふ、しょうゅがないってか」
「こら、また声」
佳奈美の声がホームに響いた。その声尻に重なるように、電車がやってくるアナウンスがぼやりと響く。まばらな人影がすと乗車位置についた。酒の熱と、ほんの少しの友達以上の関係に浮かれている自分たちがすっかり浮いているのがわかるほど、整然とした動きだった。すいません、と、なんとなく口元だけで呟く。
「祐二さん」
「ん?」
「私、しょうがないって言葉、嫌いです。だってそれって自分で何にもしないってことじゃないですか。なんかできるかもしれないけど、諦めてるってことじゃないですか」
さっきまでの浮かれた調子はどこにいったのか、床に張られた乗車位置を案内するテープの内側に収まった途端、佳奈美の声のトーンが低くなる。彼女を見やると、まっすぐに前を見ていた。前からみると丸顔で、アライグマみたいな彼女だが、横顔は思いのほか鼻が高い。
「……前から、しょうがないって、言う人嫌だったし、今でも祐二さんがそういうとき、ちょっと気に食わないんだけど」
どきりとする。さして深い意味で使ってきたことはないが、でも、確かに物事の受容のためよりは自分に言い聞かせるために使っていたかもしれない。そこまでの語感が自分にはなかった。しょうがない、と、言う方が落ち着いた。物事に立ち向かうのは骨が折れる。
「でもね、私、祐二さんがしょうがないって言ったら、しょうがなくないって、言い返してやろうと思うんですよ。しょうがないことなんか、最後までやってみてもしようがないことなんか、ないんですよ。きっと、この世には。だから、喧嘩になっても、祐二さんにはしょうがなくないって、言い続けたい。言い続けたいって思ったの、祐二さんが初めてです。で、思ったんですよ。私、祐二さんのこと、大好きなんだなって。言い返すためには、祐二さんとずっと一緒にいるしかないなって。どうですか?」
物事に立ち向かうのは骨が折れる、が、それでもいいと思うものがこの世にはあるのだということを、すっかり忘れていた。それはもう、本当にどうしてかはわからない。ただ、骨が折れても大切にしたいと思う。まっすぐに、見つめ続ける。佳奈美が祐二を見つめる。

彼女がいいと思ったきっかけは、些細なことだった。社内の自販機で険しい顔でコーヒーを選んでいたところに遭遇したのだ。顔はなんとなく見知っている。三つ下の同僚だ。
「八束、さん?」
「は、あ、塩尻さん、どうも」
名前も朧ろだったが間違ってはいなかったことにほっとした。
「なんでそんな険しい顔してるの」
「あ、いや、本当はミルクカフェオレが飲みたかったんですが売り切れで、カフェオレで妥協しようかと思っているんですけど、外のコンビニ行けばミルクカフェオレのLサイズが100円増しで買えるんですけど、Lサイズだと大きすぎるけど、このカフェオレあんまり甘くなくてああでも今私、細かいのは100円しかなくて、大きいのが一万円なのでコンビニで一万円崩したくないな、と」
最後まで聞き終える前に思わず吹き出すと、八束佳奈美はきょとんとした。その顔がアライグマに似ていて余計に笑える。
「しょうがないな。はい」
祐二が差し出した手に、ほぼ反射のように手を出した。佳奈美の手のひらには100円が置かれた。
「え、そんな、いいです」
「100円ごとき貸しでもなんでもないよ。Lサイズ買って来たら。余ったら俺飲むよ」
「は、はは」
佳奈美は小さくお礼を言って笑顔を見せた。その時の八重歯が、可愛かった。

「どうです、って」
電車が滑り込んでくる。ぶおおん、と、警笛なのか車輪の音なのかいつも聞きなれていても出所のしれない音が鼓膜を揺らした。停止線ぴったりの位置に止まり、乗車位置ぴったりにドアがやってくる。整然と並ぶ人らの前にあるドアと同じ様に、二人の前のドアも開いた。暖められた車内の匂いは、綿菓子のようにもこもこと外にはみ出してきた。冬の匂いだ、と思う。
「……しょうがない、ね」
「そうでしょ」
佳奈美は満足そうに鼻息を荒くした。なんとなく、二人で電車を見送る。はみ出していた車内の匂いは閉じ込められて、またどこかへ運ばれていく。ホームにはすっかり二人だけになった。向かいのホームにも人がいない。
「あ、これはしょうがなくないって言わないんだ」
「だって、私が祐二さんのこと好きなのも、祐二さんが私のことを好きなのも、こればっかりはしょうがないですもん」
「なんだよ、もう」
「しょうがないしょうがない」
佳奈美の声がまた大きくなったので、今度は唇で、その口をふさいだ。八重歯は当たらなかった。

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なんとなくリハビリで書いてみたけど、びっくりするほどつまらない。行き詰ってる感満載ですね。死にたい。うう。

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2014/11/14  ねこまんま
携帯を開くとラインの緑のアイコンの上に赤い数字が躍っている。未読のメッセージ数を伝えるその赤い吹き出しは、73の数字を示している。うんざりしながら、アイコンをタップするとメッセージを送ってきている人がずらりと並ぶ。高校の同級生の女の子で作ったグループのメッセージが54、正樹くんが4、エイジくんも4、孝則さんが2、今ちゃんが8、そして恵が1。他のどの未読メッセージよりも恵の1が目に着く。しかも未読メッセージの中でも彼のものが一番下ということは、一番古いメッセージということになる。彼の名前をタップしなければ私が読んだことを知らせる既読はつかない。長いメッセージとか複数のメッセージだとタップしないと内容は見れないけど、彼のメッセージはいつも短い。そして大体一通で終わっている。
「今、どこ?」
 それだけかよ、と、心の中で悪態をつきながらトイレの個室から出た。地下三階にあるこの女子トイレにも地下一階にあるクラブの爆音が響いてくる。重低音ばかりが壁を揺らす。地響きの中心にいるような気がして足元がふらついた。今日は飲みすぎたかもしれない。といってグラスビール一杯とジントニック一杯だけだ。最近、飲んでなかったから。クラブの雰囲気の所為もあるかもしれない。サイハイブーツとツイードのショートパンツの間から覗く自分の白い太腿が大福みたいに見えた。
「さきちゃん、大丈夫ぅ?」
 答える前に小太郎ちゃんが女子トイレに顔をのぞかせた。丸坊主にした頭はとっても綺麗な形だ。耳には大きなイヤーホールのピアスが目立つ。子犬みたいに真ん丸の目を、お酒の所為で少し充血させていた。
「大丈夫だよ、ありがとぉ」
 トイレ入ってんだから呼ぶなよこのガキ、と思いながら、でもこういうときはお礼を言うのが当たり前だ。今夜をともにするならなおのこと、彼に最後までお持ち帰りされるためにはかわいくってちょっとわがままな女の子になりきればいい。私を確認した彼は、ごく自然に腰に手を回してきた。ぎゅうと圧迫されると、自分が女なんだっていうことを実感する。男に触れられると、私は自分を自覚する。いつも定まらない重心が、途端に子宮のあたりにすこんと落ち着く。
 くそみたいな遺伝子だ。でも、これが、私にとっての真理なのだ。
「ね、この後どうする」
 彼の熱い息が耳元を揺らす。階段を一段上がるたびにクラブの音が大きくなる。聞こえているくせに、なあに、と聞き返すと、彼はより私に近づいて問うてくる。どさくさに紛れて頬に僅かに唇が当たった。ふ、と、笑みを持った瞳で見ると、彼も示し合わせたようにふ、と笑った。金曜日の夜ということもあって、クラブのフロアはむせかえる人の熱気と匂いで飽和していた。体全部が揺れるような音楽と、吐きだしそうになる人のうねり。もみくちゃになりながら私も小太郎ちゃんも体をぶつけ合った。二曲踊り、何がおかしいのか大笑いして外に出る。急な寒さに頬がひきつって笑うしかなかった。
「ホテル、行こっか」
 小太郎ちゃんが慣れた手つきで私の肩を抱いた。男にしては小さい手だが力はもちろん男のそれだ。ああ、彼に抱かれたい。上手いか下手かはおいておいてとにかく男に抱かれないと女の私は眠れない。どこでもいいから早く行こ、と耳元でささやくと彼は隠すこともなくいやらしい笑みを浮かべて足を早めた。

***

再来年ぐらいに出したいな~と思っている本のお話もちょこっとずつ書き始めていてこれも掲載したいところです。

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