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2013/07/04  ららばいなら
かあさん
うたつてら
こもりうた
ぼくのためじゃなひ
をさなひおとうとのため
だけどぼくもきひてる
だれかのためのこもりうた

かあさん
なひてら
こもりうた
ぼくのためじゃなひ
しんだいもうとのため
だけどぼくもなひてる
だれかのためのこもりうた

ねむりとしぬことはにてる
かあさん
ぼくがしんだらうたつてくれるか
ぼくがねむればなひてくれるか
かあさん

いまやくれなずむまちをせに
ぼくはおとなになつてしまつた
かあさん
あなたがうたつてゐたこもりうた
なにもおもひだせなひ
そのじじつも、あのめろでぃも
なみだも、けしきも、すべて、なんにも

さやうならもいえなひほど
できのわるひむすこでしたね
かあさん
ぼくのしあわせはなにかと
とうたらうたをうたつてくれますか
かあさん

わからなひことばかり
まひにちがなぜおわるのか
あしたがやつてきて
きのうがおととひになる
けふはどこにあるだらう

あなたのうたやなみだに
それらのこたえはあるのやも
かあさん
なかなひでもいいうたわなひでもいい

ただぼくに
なんでもいいからぼくに
すくひをくれたらよかつたのに

かあさん

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2013/06/21  とおいむかし
いつのはなしか
わすれましたけど
昨日の夜のような
三年前の朝のような
雨が降っていた日に

その脆弱な雨音の間から
苦し紛れに鳴いたような
猫の鳴き声
人の赤ん坊のようにも聞こえ
君の悪い、鳴き声が

助けよと
わたくしに
助けよと、
心の底から、まるで、
わたくしを苛んでいるような

窓ガラスには大粒のしずくが
ぺかぺかと打ち付ける夜に
ぱつぱつとはじけとぶ朝に
ただひとりきりのわたくし
何もできぬままに
振り子椅子に座って
その鳴き声が脳髄を犯してゆくのでした

わたくしには
なにもできぬし
なにもない
猫の鳴き声はわたくしにその
世界の無常ともいえる
たったひとりの人間の
尊厳ともいえるそんな、じじつ
ただ、
わたくしのてには
そんなひとりきりの
矜持

おお、
すぎさった夜、とおりすぎた朝、
やってくる朝、飲み込む夜
わたくしはこれからさきも
何度となく
幾年となく
てのひらをみつめては
猫の鳴き声を思い出すのでしょう

そのたびに
友の声や
失ったものたち
手には残らなかったものたち
それらを
かなしく回顧するでしょう

さようなら
ありがとう
わたくしの矜持だけはここにあるのであったから

泣き止みなさいな
泣きやみなさい
お前が知るよりは多く
お前が思うよりは深く
人に愛されることもあるだろうから

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2013/06/14  世迷言part2
疲れのために、バス内でうつらうつらしながらも
後ろの騒々しいカラスたちの井戸端会議が睡眠の邪魔をする。
つばめのフリをしていても、わたくしもしょせん、巣穴に帰れば狡猾な猫なので
カラスたちの騒々しい、言葉をひとつひとつ繋ぎ合わせながら
他の野良猫たちに好かれるような話の構成を考えねばならぬ。
しかし、カラスの言葉は思った以上に甲高い響きをもって、がんがん耳にはいってくるので
結局は酔ってしまって、バランス感覚があっても仕方がないのだと思ったのはこの時だった。


***

指を紫色に染めてみた。三か月は取れないとのことなので
そのうちにそうっと夕闇に紛れて、あの薄い靄を食べてやろうと思っている。
それと、真っ白な肌の、あの純粋そうな子の頬を思いっきりひっかいてやりたい。色素が残らない程度に。
白いデニムを、デニム禁止の職場に履いてきたあの子の、そう、あの白いデニムもびりっとやぶけるのなら
やぶってやろうと思う。それは、色素が残っても言いや。
恨み言ばっかり言っている私の舌は、綺麗な赤色なのだけど。


***

かみなりが落ちたらいいと大体思う。晴れた日も、風の強い日も、もちろん雨の日も。
でも、大体そういうときは綿ぼこりが落ちてきて、集まって、おっきな雲みたいになる、けれど、やっぱりかみなりは落ちない。
そういう空の下に生まれた、僕なので、しようがないのだけど、
ああ、今日も、ほら、わたぼこりがたくさん降ってきた。
いい加減にしろ!


***

愛されるべきあの子が愛されないで、愛されるべきでない私が愛されるので、
愛されるべきあの子は私を愛さないで、愛されるべきでない私はあの子を愛している。
毎回毎回、この袋小路に閉じ込められてネズミみたいにぐるりぐるうりと回っているのだけど
結局答えのないことが答えのようなので、私はさして、もう気にしないことにしました。
だって結局、あの子のことが好きなのだし。


***

拍手ありがとうございます。リクエストもありがとうございます。
ぼちぼち片づけていきますので、しばらくお待ちください。

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2013/06/10  txydl
白いぶよぶよの脳みそ
お前のだよ
僕んじゃない
僕んじゃないよ
聞いておくれよ

正しくなくっていい
間違ってないならいい
なんでこんなにも
君のことが怖いのか
ぼくにはわからないから
透明な方法を教えてよ

謝ることも
慰めることも
そんなことじゃない
みんなから愛される方法を教えて

そっくりかえって
陳腐な授業をするぐらいなら
独りよがりの誇りを見せ付けるぐらいなら
僕は一人ででも探しに行くよ

だからねえ、
僕にもわかりやすい言葉で
宇宙人のお話をして

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2013/06/07  I can
『好です。久しぶり!急なお願いなんだけど、沙織が今度結婚します。それで、友達のスピーチでエリオの言葉もほしいんだけど、いいかな?』
朝一番、メールアプリに新着メッセージ通知がきていた。
本当にお前、久しぶりだな、と、中学卒業以来連絡も途絶えていた同級生からのメールを眺める。
沙織、というのも中学卒業以来、連絡を取っていない同級生だ。
仲が良かったのか、と、問われると、私はすぐに答えを出せる気がない。

中学二年生。十年前の話。そう思うといろんな意味で自分自身に戦いてしまう。
十年前、といっても十四歳のことを指すこと。十年前、を、数えられるほど自分が年を重ねていること、
その頃を思い出すたびに、今の自分とさして違いもなく怖くなること、そういうことについて戦いてばかりだ。
私の中の「十年前」の言葉の響きは重く、それは、自分自身の、私であるというアイデンティティーを持つ前を指し示す言葉だった。でも、十年前はそんなに昔ではないことを、頭では知っているけれど実感としてはいつまでも覚えられない。だから戦いてばかりいる。
時間の流れ方はおかしい。時間の経過の中にいるときは何も思わないのに、十年たって、十年を思い返して、一気に時間がその瞬間に十年分が流れて行ってしまう。心持はそういうことだ。
沙織とは、そんな、戦いてしまうほど最近の十年前、中学二年のときに同じクラスになった。
いわゆるはぐれ者同士だったと思う。
沙織は不良グループの中でも兄弟三代みんな不良で名をはせており、存在自体が他の不良からもあがめられているような感じで、同じ仲間のはずなのに不良からも威光がありすぎて浮いていた。
私はというと、優等生タイプの至ってふつうの中学生だと思っているけれど、一年生のときに仲の良かった友人とも離れてしまい中途半端な仲の子だけがクラスにいた。同じ吹奏楽部の、同じ楽器の子らもいたが、同じ時間を共有するからといって仲の良さが比例するわけではないし、むしろあの子らに至って時間量と親密度は反比例していたと思う。
つまり、私はなぜかしら彼女たちから無視されたり、不当に冷たくされたりしていた。私の態度が鼻についたのか、どうだか、もう十年前の話なのでどうでもいいけれど、それでも、たまに自分一人だけにされているという疎外感を思い出して辛くなるときはある。
つまらぬことだとは思いながらも、やっぱり心はきちんと覚えているのだなと毎回関心する。
それでも、中学生にとって常に行動できる友達がいることが勝者で、一人でいる者は敗者でしかなかったから、中途半端な仲の子と、話が合わなくても違和感を感じていても一緒にいた。
その時に、私は沙織と滅多に話すこともなく、そもそも彼女自体教室にいなかったので彼女に関する記憶はほとんどない。
いつごろだったのだろう、夏休みも近づいた頃か、夏休み明けか、席替えをして沙織と近くなったのだったか、なんだったか、とにかく沙織と近づく瞬間があったのだ。
私は、彼女をどこかで怖がっていたし、彼女の中で私をどこまで認識していたのかもわからないが、それでも、私たちは接近した。
それから、何を話したか覚えていないし、どんな手紙を交換したのかも、帰り道にどんなことで盛り上がったのかもわからない。でも、私たちは確実に親密度を深めていたのは確かだ。
「エリオ、帰ろう」
私の苗字が襟岡なので、沙織はそう呼んだ。私は部活をやっていて部長で、彼女は部活をやっていても幽霊部員だったから、いつも一緒に帰るのはテスト週間やテストで早く帰れるときだけだったけれど、沙織は茶色い髪の毛をふわふわさせながら私の席にくる。私もカバンに荷物を詰め込んでうんうん、と頷きながら席を立った。
その頃、好とも仲良くなった。好は沙織ほどではなかったが、不良グループに分類されていたと思う。好も沙織も、先輩の不良たちともつながっていたし、私も二人が、同じ中学生とは思えないほど体格もよく髪の毛も金髪の先輩と話しているのを何度も見て知っていた。
好は根は真面目で、私に勉強を教えてほしいと言ってきて、休みの日やテストが近くなると一緒に図書館などで勉強をした。私は、沙織と一緒にいるほどは緊張はしないので、好といることを次第に好んでいた。
とはいえ、好は隣のクラスなのでやはり学校内では私と沙織が一緒にいることになる。嫌ではなかったし、彼女と話すことは自分と視点が違うものの見方を知るいいきっかけになった。私がいかに優等生で、一辺倒なのかも、その時よく知った。
「エリオは、将来どうするの」
帰り道、沙織がそう訪ねてきた。二年生も終わりの頃だったろうか。彼女は学校では禁止されている明るい茶色のピーコートを着ていた。かわいいと思ったし、私と一緒にいるからか先生も下手に注意をしてこなかった。
「どうしようかなあ。あんまり考えてなかった。沙織ちゃんどうするの」
「わかんないけど、沖縄住みたいんだ。どうにか住めると思うんだよね」
「沖縄」
「そうそう。もうさ、このあたりじゃなくて、どっか、沖縄、行きたくて」
「好きなの?」
「うん。このないだも夏、行ったんだけど――」
沙織は意気揚々と沖縄のことを話した。でも、私はちっとも楽しくなかった。羨ましさと妬ましさが先に立ってしまったのだった。
私の親はどちらも教師で、他の家庭に比べれば比較的厳しく育てられたと思う。ある意味マインドコントロールにも近くて、私はこの土地で生まれたからにはこの家を出ず、まっすぐと、親が期待するどおりの道を歩んでいくのが正解で、この場所に、この親に、帰依していくものだと、思い込んでいた。だからこそ、沖縄に行きたい、なんて冗談でも気軽に言ってしまえる沙織がうらやましく、妬ましかった。
少しずつ、バランスが崩れたのは進級してからだったように思う。
三年生になって、私も沙織も好も同じクラスになった。私の仲の良い子も同じクラスになった。和気藹々としたよいクラスだったと思う。
沙織と好はよく一緒にいたし、私も仲の良い子と一緒にいて、好とは相変わらず勉強会などをしていたが、沙織と一緒にいる時間は格段に減った。私も、敬遠するきらいもあったけれど、確実に向こうも私を避け始めているのがわかった。
今更、何が原因だったのか、考えてもしようがないしわかったところでその時間に戻れるわけでもないけれど、お互いの心のしこりが同じように働いて、いつのまにか、おそらく磁石のN極とN極、もしくはS極とS極のように、離れて行ったのだろう。
私は、結局彼女に対する嫉妬心や羨望を捨てきれなかったし、彼女は私に対する劣等感を持っていたのではないかと推測する。そして、そのままになってしまった。

中学の頃は総評して良い思い出がないし、自分が本当に心許せると思える人物に出会ったのは高校になってからだったので、自分の中学の記憶には自然と封をしてしまっている。
以前、成人式に出たときに、中学校の校区ごとに区切られたテーブルに行くと好と沙織がいて、きゃああエリオ、と私を歓喜で迎えてくれたが、一人で来た私を見て「ひとりできたの?強すぎる」と好が笑ったのを見てもう、どうでもよくなった。
沙織ちゃん、今何してるの、と尋ねると「夜の蝶だよ」と爆笑が返ってくる。他の中学の同級生もそんなのが多く、県外の大学に通っていた私としては、ギャップが大きすぎ、恩師の謝恩会などには出ずに次の日には大学の寮へと戻った。
失われた、と、なぜか無性に悲しくなったのを覚えている。

久しぶりの好の名前を見、一瞬断ろうとも思いつつ、祝い事なので心象も悪いだろうとしばらく眠い目をこすりながら考える。今日は一日社外で研修なので、できればあと五分で文面を考えてしまいたい。
それでも、十年、まともに連絡も取っていないかつての友人に、なんという言葉を送ったらよいのか、すぐに出てくる奴がいるのなら教えてほしい。
私はあの十年前、ほどけていった沙織との縁を、つなぎ留めておきべきだったんだろうか。
朝日が差し込んでき、部屋の温度がじわりじわりと上がっていく。
私はぼうっと液晶を眺めながら、文字を打ち始める。

『沙織ちゃん、結婚おめでとう。私の中の沙織ちゃんはいつも笑顔で、その笑顔は周りも巻き込んで笑顔にさせる力を持っていると思います。どうか、これから先もその笑顔で、家族を巻き込んで笑顔の絶えない素敵な家庭を築いてね。こんなんでいいかな?』

送信ボタンを押す。はー、と溜息をついてから、昨日の夜から用意してあった服に着替え始める。グレーの薄いシフォンブラウスに黒いスキニーパンツ。薄手のカーディガンも羽織り、化粧も済ませてパンプス用の靴下を取り出そうと収納ケースに近づく。
と、壁にかけてある布製のレターホルダーに目が行った。縦長のタペストリーのようなホルダーにはポケットが5つついていて、そのどこにも、いつのものだかわからない手紙が押し込んであった。ルーズリーフを折った形のものが多いので、大方中学とか高校のときにもらった手紙だ。ここに入っていることをたまに思い出すものの、捨てるのはなぜか気が引けて手を付けていない。
その中に、一つだけ茶色い封筒が突っ込んであった。形がそれだけ大きいので、他のルーズリーフの集まりから飛び出していた。何の気なしにそれを取るが宛先も送り人も書いてない。手渡しだったのか、と、中身を見る。

『だから、エリオのいいように、この先の人生を決めてほしいなと思います。大矢は、絶対にエリオのことを幸せにしてくれると思うし、エリオも大矢のこと好きなのかすごく伝わってきて幸せそうだよね。結婚式には絶対スピーチするから呼んで! あとちょっとしか、中学生活を送れないけど、よろしくね。幸せにね~』

まるで絵みたいに泳ぐ丸い文字は、間違いなく沙織の字だった。途中から始まった便箋の右上にはNo,3と振ってあるから、あと本当は二枚、これとセットになるものがあるはずだけれど、ホルダーには入っていなかった。
大矢は、私が中学三年生のときに付き合っていた彼氏のことで、卒業式の前の日に別れた。四か月ほどしか続かなかったし、この手紙からするに付き合いたてのようなので、12月ごろのものだろうか。その頃にはもう、沙織とは口をほとんどきかなかったし、本来ならもう、志望高校を決めているはずなのに、私は沙織の希望校を知らなかったし私も彼女には教えていなかった。クラスの他の子の志望校はほとんど知っていたにも関わらず。
嘘つき、と、一瞬思ったが、沙織は馬鹿ではなかった。私の内心を読み取って、自分の心持ちも知っている中で、こんな手紙を書いてくれたのだ。馬鹿はたぶん、私だった。当時の私は、「嘘ばっかかいて」、白んでいたに違いない。
不器用な私の、彼女の、精いっぱいのやり取りを、どうして私はもう、思い出せないのだろう。沙織なら、覚えてるのか。

なぜか涙が出てきて、中学二年生の頃、十年前を思って、戦いてばかりいる。


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