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2014/09/24  「ミニチュアガーデン・イン・ブルー」「溺れたあとに光る色」感想
今日も二冊、感想です。

「ミニチュアガーデン・イン・ブルー」キリチヒロ著/A5/186頁/600円
まず、表紙の絵がとっても綺麗です。
前々から何度か書いてるかもしれないんだけど、BL漫画は読めてもBL小説は読めない類の人間なので「BL」ってジャンルはどっちかというと敬遠しているのですが(自分で書いておいて何を言ってるのか)、今回は表紙の絵がとっても綺麗なこともあって、期待していました。
内容は、海辺の小さな田舎町の、高校生三人のお話。犬も出てきます。犬がまた、色んな象徴になっているのかも。と、今、思う。
高校生三人のうち、二人がそういう関係になっちゃうんだけど、それはとても「象徴的」な行為であって、もちろん男同士なんだけど、そこが主眼じゃないような気がしました。
ただただ、根底に流れているのは自己を認めてほしいという自己承認欲求、と、誰かを愛したいという渇望、なのかな、と。誰かをどれだけ愛しても自分自身にはなってくれないし、自分も誰かになることはできない。少年たちの、歪むほどに純粋な愛というか、純粋ゆえに歪む愛というか、難しいところだし、実際そこまでどろどろ暗い話ではないんですけど、本当に、根底には寂しさが流れている感じでした。
BLっていうジャンル、なんだけど、別に全然BLじゃなくてもいいと思いました。個人的には。「BL」っていうのも、このお話を形作るただの要素であってジャンルじゃないかな、と。
ちなみにこのお話、すばる新人賞を一次選考通過したそうです。確かに、一次であっても通過は絶対にできるレベルの筆致です。読みやすいです、そこは全くもって。
ただ、「物語」という風に見てしまうと、色んな要素が多すぎて、だからこそこのお話足らしめているんだけど、ちょっと置いてけぼり感があるかもしれません。でも、登場人物たちの目線になるとそういうの、あんまり気にならないので、旨い具合に「田舎」という舞台が生きているのかなあと思います。
読み終わった後に、なんかこう、しっくりこなくって、仕事中もちょっと考えていたんだけど「あ、これ、めちゃくちゃ寂しくて、皆がみんな、一方通行なんだ」って思った瞬間にめちゃくちゃ悲しくなりました。誰も救われないじゃねえか、という。そこがこのお話の根本かもしれませんが。

「溺れるあとに光る色」キリチヒロ著/A5/174頁/700円(R18)
こちらは上の「ミニチュア~」の続編。高校生三人のうち、そういう関係になった二人が東京の大学に進学した後のお話。「ミニチュアガーデン=箱庭」から出た二人の成長のお話、で、成長を象徴するかのように一人の女性が二人の間に入ってきます。で、片方の彼女になる。
でも、「誰かを愛する」っていうことがつらくて悲しいことだっていうこと、孤独になるっていうことと同じだってことを強調してくる。そなお話でした。結局二人は成長できたのだろうか、と思うと、ちょっと謎でした。どうなんだろう。男の子二人の関係や、女性との関係をもっともっと読みたかったなあ、と思いました。金原ひとみを彷彿とさせる筆運びです。とくに女性の独白なんかは、誰を好きになることで、どんどん自分が曖昧になっていくというか、壊れていくというか、もういっそ壊れたい、という、心情がけっこうクる。
「ミニチュア~」よりも、より、登場人物たちの心情にクローズアップした感じですね。なので、ちょっと置いてけぼり感がここでも会った気がします。もっともっと、気付きの瞬間が見たい。
R18っていうことで、それなりな性描写もありますがどっちかというとライトなので、シーンに必要な分だけを入れている感じでバランスは良いです。嫌な感じはないです。
あと、各話のタイトルがカクテルの名前で、とってもおしゃれです。このセンス私には全くない。

二冊を総じて、キーになってくる男の子の心情があんまり描かれないんですよね。それが気になっちゃって。
どうやら、この二冊の間の時間軸のお話も書かれているということだったので、今から楽しみにしているところです。
秋の夜長にぴったりな、ちょっと寂しいお話です。

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