どこをみているの
2025/02/24 [PR]
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2011/03/31 Prayback
珍しく彼がへらへら笑う。
大して重要じゃないんだってことを言いたいってことは、たぶん、ばかじゃなかったらわかってる。
こんな、いかにも、な、空気。
それを自分が作っちゃってることも、彼はわかってる。
「なんであのとき、あたし、あんたの傍に、いなかったんだろうって後悔してる」
「今はあのときじゃないよ」
「わかってるよ」
「じゃあ今言っても仕方ないよ」
ベッドの下で寝返りをうつ音がする。私も寝返りをうって背中をむけた。
床にしいた布団は寒くないか、背中は痛くないか、を聞きそびれてしまったけど、もう気まずい。
彼が鼻をすする。
鼻風邪か花粉かハウスダストか。とにかく涙じゃなければあたしはそれでいい。
「昼に干したときによく払ったけど」
半分布団にもぐったまま言ったから何を言っているのかわからないだろうと思ったけど、彼の答えははっきりと帰ってきた。
「大丈夫、寝るときいつもこうだから」
「うん」
「ゆきな」
布団から耳を出す。ひやりと冷えた空気の音まで聞こえるような気になってくる。
「今更こんな話してごめん」
ずっと鼻をすする音。
「あたしもそのとき聞いてあげられたらよかったね」
「無理だよ、出会ってないもん」
「でも」
寝返りをうって彼の方を見た。彼も寝返りをうったようだった。
ベッドの高さで彼の顔はわからなかったけどごそごそ動く様子はわかった。
暗闇に慣れた目に、オレンジ色の豆電球がまぶしくうつる。
「今聞けてよかったよ。聞かないよりは…それにやっぱり話したかったんだと、思う、思わせて。私だけは、味方でいさせて」
彼は鼻をすすって黙っていた。
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