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どこをみているの
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2011/11/21  しろいせいたい
ねえ、裏切られる瞬間ってどんなんだと思う

深夜の踏切、肌が切れてしまいそうな寒さの中でさなちゃんは尋ねてきた。
今日は流星がみられるとニュースで言っていたのに、薄い雲のせいで流星はおろか普通の星さえ見えなかった。

今みたいな気分じゃない。星が見えないから。
そう思う。
うん、てか、勝手に裏切られてろって感じ
そうかあ
そうだよ

さなちゃんは白い息を吐き出しながら昔は赤い星だって見えた、とつぶやいた。
今より小さな小さな頃、今よりもっともっと遠くにあった空に浮かぶごみつぶみたいな星の色を私たちは確かに見分けることができたのに。
赤い星は死にかけ、青い星はうまれたてなんだよ、と教えたらさなちゃんは返事のかわりに鼻をすすった。
熱々だった缶コーヒーもすっかり冷えてしまいスチール缶に触れたら凍傷をおこしてしまいそう、なんてことをとりとめもなく考えた。
口が乾燥してしまって、唇がくっついて上手く話せなくても相変わらず缶に指を伸ばす気にはなれない。

さなちゃん、裏切られたことあんの?
まあ、むかし、何回か
何回もあんの
大げさって言いたいんでしょ
いやべつに
私には裏切りだった
そうかあ、でも私、さなちゃんのことうらぎらんよ
なんで
さなちゃんと一緒におるの楽だで
そうかあ
そうだよ。さなちゃん、好きなものとか嫌いなものとかはっきりしとるやん、だから楽だよ。何も怖くないのし
じゃあなんでうらぎられたんかな
それは相手がさなちゃんの良さに甘えてたか、裏切ってないか
あたしにも勝手に裏切られてろって思う?
思わんよ、だって私はもう当事者だから
当事者?
さなちゃんの恋人
ひ、ふふ

さなちゃんは笑って、渇いた唇で私に触れた。毛布を引き寄せる。

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2011/11/17  かたまってきた
足がうごかんらしいです
固まってきた塊は砕いたら使えない
ねえそっとしといてお願いよ
あんたに触れられたらもうどうにもこうにも

心臓うごかんらしいです
固まってきた余命はあと何ヵ月かも
ねえほうっておいてお願いよ
あんたに言われたらどうにもこうにも

寂しいんだっていうわりに
誰にでも足開くんだからたまんない
固まってきたんだ気持ちまるごと
死ぬって怖いことだなどうにもならんもんだな

好きですきですきです
なんて

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2011/11/14  5555211
神様の指がほしい。
私だけに優しい指が。

選んでくれる。
撫でてくれる。
愛してくれるはずの指がほしい。

あたたかな賛美歌を歌ってください。
その指は鍵盤の上。
白と黒のソリチュード

どうか愛してください。

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2011/11/11  payment
許される人間になりたかった。
別に、英語など話せなくてもいい。
地球一周も宇宙旅行もいけなくてよかった。
ただ
誰からも愛されて
許される人間になりたいと一人請うていた。

美しい人間になりたかった。
別に、高く飛べなくてもいい。
バレーボールもサッカーボールもできなくてよかった。
ただ
誰からも求められて
美しい人間になりたいと一人せがんでいた。

どうか、そう、認めてもらえば
どうか、そう、美しくあれば
この世界一つまるごと私の手におさめられると
そう、思っていた。本当は。

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2011/11/08  あめときみとぼく
雨ふってる。

夜中、かなちゃんは起き上がって窓の方をむいた。あたしは眠いので目を瞑ったまま彼の様子をうかがっている。
といって何をするわけでもなく、彼は黙って窓の外に思いを馳せているだけらしい。
ぱらぱらと雨粒が散っていく音だったり、ごつんと水の固まりがあたって砕ける音もする。
すぐに眠ってしまうと思ったのにあたしの頭はどんどんさえていく。たぶん隣でかなちゃんが半身を起こしているせいで布団がはだけて肩が冷えるからだ。
でもかなちゃんがまだ布団に入る気配はない。

かなちゃん、寝なよ

かなちゃん、寒いよ

かなちゃんてば

返事がなくなる。
あたしは渋々起き上がってかなちゃんの肩に触れた。彼の体もまた冷えている。
後ろから顔を覗き込むと、珍しくむっつりてはしていなくて柔和な無表情をしていた。
かなちゃん、と耳元にキスしながら呼ぶと目線をゆっくりこちらに向ける。

さびしいんでしょう
んなことねえ
いじっぱりなんだからさあ
んなことねえって
雨、強くなってるね
ああ
明日、仕事休もっかなあ、かなちゃんせっかくおやすみだもんね
好きにしろよ

かなちゃんの首に腕を回すとかなちゃんもゆっくりあたしの腕に手を回した。掌はあたたかくて、眠いんだろうなと思う。

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