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どこをみているの
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2013/10/20  言葉の先に
夜、雨粒が砕けていく音がして、ふと目が覚めた。
深夜なのに、とても目覚めが良く、そのことに自分でも戸惑いながら雨音を聞いた。

雨はどこにも平等に降る。
そのことが、私を安心させた。
かなちゃんを苦しめるこの雨も、誰かにとっては恵みとなる。綺麗事を言うつもりもないし、そもそも綺麗事かもよくわからないけれど、かなちゃんだけに冷たい雨ではない。どこかで、誰かも濡れている。
ひやりとする部屋で、私はじっと、雨音に聞き入っていた。

と、携帯がなる。寝ていたら気づかないバイブレーションは、まるで私が起きていたことを知っていたみたいに、愉快そうに震えている。
「もしもし」
少しいがいがした喉から、くぐもった自分の声がして、耳元ではかなちゃんの薄い呼吸の音がする。
「まる」
「うん」
「起きてた?」
うん、と、声に出したつもりがかすれた吐息だけが喉から漏れる。それでも十分伝わったみたいで、彼はほうっと息を吐いた。
それから他愛もない話をした。今日の夕飯のこと、仕事の事、買い物に行く気がなくなったこと、近所の保育園の運動会が中止になったこと、台風のこと、とか、そういうもろもろのこと。かなちゃんはうん、とか、ああ、とか、たまに少しだけ言葉を漏らしながら、寝まいとしている。
「かなちゃん、寝なよ」
「寝れない」
「寝れるよ」
かなちゃんは黙る。拗ねてるのかもしれない。雨の日に眠れないことが、彼の一つの贖罪のようなものだったからこそ、彼は眠りたくないのだ。
「そんなに責めなくていいよ」
私の声は自分でも驚くほど優しい響きをもっていた。かなちゃんがどう捉えたかはわからない、けれど、私はいつも、彼に、優しくありたいと思っているから、そのことが少しでも伝わればいいと思う。
「まる、おれは♥」

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最後のセリフでミスタイプをして、カナちゃんが全く別人になってしまったのでやる気がごっそりと削がれてしまいました…
なんだよハートマークって!!!!

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