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2015/09/21  「スクラップ・アンド・ビルド」感想
◆「スクラップ・アンド・ビルド」羽田圭介/文藝春秋◆
「早う死にたか」
毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。日々の筋トレ、転職活動。肉体も生活も再構築中の青年の心は、衰えゆく生の隣で次第に変化して…。閉塞感の中に可笑しみ漂う、新しい家族小説の誕生!第153回芥川賞受賞作。――アマゾンより
又吉直樹の芥川賞受賞が同時だったためなんとなく影に隠れている…と私は思っていたし、結構そう思ってた人もいるんじゃなかろうか。でも、私は読むなら絶対こっちだなと思っていて。これはまあどうでもいいプライドと、ずっと昔、羽田圭介のデビュー作「黒冷水」を読んだのを思い出して、「あ、羽田圭介が芥川賞とってる!!!」っていう驚きと、なんだかんだ、十数年も作家を続けて頂点とも言われる芥川賞をとったんだなこいつ(というなぜか上から目線)という感慨深さに惹かれたのもあり、久しぶりに、芥川賞に選ばれたということはおそらくがっつりの純文学読みたいなと思って手にとってみました。
あらすじは完全に上のとおり。しかしまあ文章、というか、なんだろうか言葉の運びがいいな。男のシンプルなよさをいかした文章、というか、必要最低限のことしか書いていないのに、読むことのできる文章というのかなあ。ストーリーについては、私は大して考察しなかったしめちゃくちゃ面白かったかというと別にそうでもないし、捨て置く人は捨て置くだろうし、っていうもので、だけど、文章の美しさ、飾らないその言葉が私はとても好感が持てたなあというか。まあプロだからだけど。とはいえ、これが芥川賞か、というと、密度が低いような気もしたけども、いいな、と思った。スクラップアンドビルド、は、老いていく祖父ともう一度歩き出そうとする青年のことでもあるのだろうし、アマゾンのレビュー見てたら結構面白く考察してる人もいてなるほど~ともなったんだけど、私は読んでいて、羽田圭介自身の崩壊と再構築なのかなと思っていた。
完全に個人的な妄想でしかないし、羽田圭介の作品はデビュー作の「黒冷水」とこの「スクラップ~」だけなんだけど、この差が歴然としていて、この十数年の間で彼に何が起こったのか、というか、文章を書くこと、壊れること、生きること、もう一度再構築して生きること、なんかが、全部、詰まっているような気がした。主人公の健斗のうだつの上がらないぐらいがすごいリアルで、これはきっと本人なんだなと思って。純文学ってそういうところがいいなと改めて思う。
最後の方で、実はじじいはボケ老人じゃねえんじゃねえか?!と思うところもあったりして、だけど、あんまり健斗はわかってなくて、もう自分のことをじっと考えてしまうんだよね。それぐらい、今まで、自分と向き合ってなかったんだろうなって思った。私は。最後の一節で、
「どちらにも振り切ることのできない辛い状況の中でも、闘い続けるしかないのだ」
っていうのがあって、ああきっとここが書きたかったんだなと、なぜか感動しました。

私もなんか書こうかな~

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