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どこをみているの
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2011/12/12  白空
あたしは泣きそうだった
何がどうということもなく泣きそうだった
そう、たとえば何でもない日常の中で、
空気の匂いがかわる季節や、木々の枝が細くなる様や、寄り添う飼い主と犬や
そういうものらはいつもあたしを悲しくさせる

イヤホンからあふれ出るばかげた愛の歌なんかを聞きながら
あたしはただ惚けたアヒルのように口を半開きにして。

白くけぶるように見える冬の空はわずかに青く色づいているのに、どこか柔らかい。
国道添いをふと振り返るとオレンジ色の太陽が木立の後ろに隠れようとしていた。
まるで巨大な影絵がそこにあるようであたしは立ち止まった。

数年前、いつだろう、とにかく何年か前の同じころにあたしはここにいて
隣には彼がいて、手をつないでこの景色を見ていた気がするのに、
いまやっと思い出して、それすら曖昧でどうしようもなく、記憶など記憶できないようになっていたらあたしはきっとこんなにも泣きたい気持ちにはならないのに。

あたしは一度大きく鼻をすすった。
ガソリンスタンドの店員がこっちをちらと見て、また仕事に戻っていた。

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