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どこをみているの
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2011/02/14  雨乞い
雨がふればいい
私は部屋を真っ暗にして
鈍い痛みを子宮にかかえ
その湿りを思う
彼方にもにた茫獏

霞がたなびけばいい
私は部屋を真っさらにして
眩しい目眩を瞳に映し
そのもやけきを思う
貴方にもにた純潔

さようならと
あいしているの
波間に漂うのは某の息子

彼方貴方から

滑り落ちる闇

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2011/02/10  全部忘れてしまった
まつげにダイヤモンド
指先にLEDライト
暗闇で僕を導くデジタル放送

いつの話
いつのこと

僕が生まれたのは
僕が死ぬのは
君を愛するのは
君を憎むのは

まつげにダイヤモンド
指先にLEDライト
朝焼けに見えた僕らの未来

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2011/02/06  ハンドトリック
いないないばあ、をして
またねばいばい、
君の足音遠ざかる

小さな公園影ひとつ
僕の影ってあんなに長いの
悲しい時間

いないないばあ、をして
さよなら言わず
亡くなる君の最後の涙

言えたことこそ役得と
指に絡んだ赤い糸
あやとりは嫌い

夕陽だけは全部見ている

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2011/02/05  分ち書き
分ち書きしてみて
あたしの気持ち
白黒メール
ことばの切れ端
ただえぐるだけ

めんどくさい関係
むげにできない涙
嘘っぱちの提言
ただ放すだけ

知らない
べつに、知らない

なのにどうして

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2011/02/03  甲斐田温
自分の横を通り過ぎた女性からかすかにみかんの匂いがして、
何の気なしに顔を上げて目で追い掛けたらそれは高校の同級生で今日今から待ち合わせをしているはずの江野春也だった。
たぶん。
というのは彼がまるで女性のように見えたからだ。薄く化粧をしていたのが一瞬で見て取れた。
もちろん自分の仕事柄、スカートを履いていたり髪の毛が腰まであったり
ばっちり化粧をしているような人間に会ったことがないわけではないが
江野はそういう人らとは何かが異なっているようだった。
最近ではトランスジェンダーとかいうこともあるみたいだし、と、
ごちゃごちゃ考えているうちに彼が遠ざかっていく。
周りも憚らず、思わず大声で名前を呼んでしまった。
彼は驚いて振り向き、しかし彼の顔は美しかった。

(やっぱり、江野だ)

小さくつぶやく。


高校一年のときに同じクラスになって、たまたま席が近くなり仲良くなった。
何をして過ごしたなんてことはいちいち思い出せないが、江野のいた時間の心地よさは今でも思い出すことがある。
それはもしかしたら卒業後、何度連絡しても返事がない彼への淋しさと多少の憤りが美化させていたのかもしれないが。
もともと自分は人見知りしないタチだし、人に対する好き嫌いなんかも殆どないから
誰とでも仲良くすることはできたのだが
そうはいっても周りに集まってくるのは俺みたいにバカでお調子者でうるさい奴らで、
今考えると江野のような大人しいタイプは異色っちゃあ異色だったのかもしれない。
俺の家は高校から近く、両親も共働きだから友達を呼んでは好き勝手していた。
たまに江野を招くときもあって、その時は俺も気を遣ったんだろう
(というのはその時何を考えていたのかはあまり思い出せないからだが)、
二人で部屋でマンガを読んだりDVDを見たり、ゲームをしたり、
江野に俺が勉強を教わったりしていた。
いつも俺がつるむ奴らは自己主張が激しくて、誰かが話していてもすぐに上からかぶせて発言するような奴らだったが
江野は俺の言うこと最後まで聞いて、うんうんと頷いたり、納得いかないところはつっこんできたらする。
彼からは特に話題を振ってくることはなくても、それは苦手なだけであって
決してこちらの気持ちを無碍にすることはなかった。
誘うのはいつも俺からだったし、それにたいして不満が無かったといえば嘘になるが
実は好き嫌いがはっきりしていて、少し毒舌で、何だかんだと付き合ってくれるから
彼も嫌がってはないのだろうと思っていた。


「甲斐田のことすごい好きだったんだよ」
彼は顔をそらし、少し恥ずかしげに言った。
数年ぶりに再会した彼は髪の毛をボブにし、うすく化粧さえしており
俺たちのような異性愛者を“正常”とするならばそうでないことをポロリと口にした。
今は彼氏がいる、と続けて言った彼に対して思わず幸せにな、と口走ったが
帰りの電車に揺られながら安易なことを言ってしまったものだとぼんやり考えた。

高校を卒業してからというもの彼から連絡はなく、
こちらからことあるごとに連絡してもレスポンスはほとんどなく、
いつからこんな風だったかな、と遡って考えても記憶は曖昧で釈然としない。

(なんだかなあ)

暗闇に浮かぶ車外の景色を眺めた。
調理の専門学校に行っていたことも知っていたし、何かで彼が創作料理のレストランで働いていたことも知っていたけれども
高校時代に俺を好きだったことや、同性愛者であることや、化粧を好んですることや、彼氏がいることなど
この数年様々なことがで変わってしまったのか、俺が知らなかっただけか。

(江野、きれいだったな。)

別に自分が彼氏になりたいとかそんなことは思わないが、
一つ一つの駅を通り過ぎるたびに、
きっと江野と一緒にいて居心地がよかったのはたぶん、
彼が俺のことを好いてくれていたからだろうことをやっと気付いた。



「あっちゃん、いいことあったん?」
週に一回バンドのメンバーで飯を食いながら、ライブのことだったり新しい曲を作ったら披露したりする。
立春をすぎ、気温もあがった頃に俺の家で飯を食った。
最近作った譜面を見ながらドラムの市尾がニヤニヤとしている。
それを見てベースのカシも覗き込み、ふうん、と笑った。
「俺、結構好きだな、これ。温の声だったらすげえよくなると思う」
カシの誉め言葉はめったに聞けないので思わず市尾と顔を見合わせる。
「安井も好きだと思う。あいつ絶対にアコギ一本でやりたがる」
「わかるー!なあ、あっちゃん歌ってよ、どうせ今日やる予定だったろ」
壁にかけてあったアコギを渡される。チューニングを軽くして、指を弦にかけた。
「あ、タイトルなんていうのこれ。仮もついてないじゃん」
「あー………そうだな」
がちゃん、と玄関があいて安井がぶつぶついいながら入ってきたのがわかる。
安井が現れた。外気のなまあたたかさをそのまま纏ってきたようだ。外はきっと春の温かな香で満たされているだろうと思う。
「あ、曲お披露目?なんての?」
安井が荷物を乱暴においてどすんと腰を下ろした。
三人の目が俺に集まる。
「仮だけど」

(江野、きれいだったな。)

「ハル」

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