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2011/03/01  るるる
鼻歌まじり
赤い血へド吐いて
君は笑えるのか
そんなに痛いのに

痛みを痛みとして
涙を涙として
うけいれるすべを
僕も君もいつのまにかうっちゃった

ねえそれなあに
がらんどうの瞳には何もうつらない
赤い血へド吐いて
君は笑えるのか

泣いてよ

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2011/02/25  春の日
先生のいなくなった病室はそれでも、あたたかな春の日をあびて柔らかく午後を過ごしている。
まるであの壁やカーテンや床に先生の赤い血が飛び散っていたことなどまるっきり忘れてしまったように
ただただ平和な午後を享受していた。
相も変わらず中庭からは子供たちの笑い声が響いてくる。
きらきらしたその声が日差しにもにた温度とともに悲しさを運んできた。
鼻筋にえもいわれぬ痛みと湿り気を覚えたその瞬間に、涙があふれていた。
意に介さず涙が溢れたのはこれが初めてだったけれど、不思議でもなく落ち着いたものだった。
感情と反比例するのか涙は量を増し、視界にはただ白く歪んだものたちが溢れる。
鼻水が喉に流れ込み、思わず咳き込んだ。
その様子に気付いたらしい藤崎さんはあわてたように病室に飛び込んでいらっしゃる。
深緑色のビロードのような生地の上着に、白いシャツと白いズボンを履いている彼もおかしく歪んだ。
いつもは冷静でいらっしゃる藤崎さんがおろおろとして、ポケットからなんとかちり紙を取り出して差し出してくださった。
頷きながらいただき、涙を拭く。ざらついた紙が頬を滑ると先生の指を思い出す。
いつもざらざらしてささくれだらけで、それでも優しく撫でてくださった。

「鮎子さん、外に鴎四朗くんもいます。少し座りませんか」
「ええ、そうですわね」

背の高い藤崎さんは少し屈むように私の背中を押した。温かくて大きな手。ゆっくり歩きだした。
ほつれた髪の毛が肩に落ちた。

「葵さんは?」

まだポロポロとでる涙を、しわしわになったちり紙で押えながら、待合用の長椅子に腰掛けた鴎四朗さんを見る。
彼は彼で、葵さんの見舞いで疲労しきっているようだった。
少し赤い目を一回乱暴にこすり、頼りなく笑ってみせる。
自ら極度の人見知りであると宣言する彼が、こうして私にも微笑んでくれるようになったのも
先生と葵さんの悲しい共通点のお陰だろう。
私たちは二回、同じ悲しみを迎えることをやっとこのとき決意した。

「葵は泣き疲れたみたいで、今は眠っています。ご迷惑をおかけして…」
「無理もないわ…」
「私は、葵を、できれば幸せなまま見送りたいんです、鳴瀬先生のように、」

彼は顔の真ん中にすべて集めるようにして顔を歪ませると声を堪えて涙を流した。
歯を食い縛りながら泣くものだから、唇から血の気がなくなり真っ白になっている。
藤崎さんが長椅子に腰掛け、鴎四朗さんの肩に手を置いた。
私は鴎四朗さんの前に膝立ちになり、しわしわになったちり紙で彼の涙を拭いた。
あとからあとから涙がこぼれてくる。
私の目からもまた、涙が一粒落ちた。

「葵さんは生きているの。それを見守りましょう。死ぬのではないの、生きているの」

鴎四朗さんは頷いた。

「…鳴瀬先生はきっと、いえ必ず、幸せだった。
生きていたのを最後まで見ていてもらえたのだから、きっと、
幸せでした。生きているのがこんなに素晴らしいとは思わなかった、と」

その彼の言葉に洟をすすったのは藤崎さんだった。

廊下の突き当たりにある窓からは春の日が差し込み、白く古い床にその姿をうつしている。

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2011/02/20  とける
薄闇にとけていく
怒りと固執
あたたかな午後
ならない携帯
彼女の声言葉

痛みばかりが漂うのは
きまって
心臓の近く
唇の近く
前頭葉の近く

薄闇にとけていく
信頼と裏切り
くだらない矜峙
せつない時間
彼女の想い文

またひとつ闇が薄くなる

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2011/02/19  ディスタンス
ほしいものはわからない
、ふり、をしていたら
君は僕のほしがるものに気付いて

知らない、ふり、をした
、から、ぼくはまだ
わからない、ふり、をしつづけた

いつまでも
ぼくもきみも
かいてんもくばも
ほんとうのことはいわない
、つもり、でいる

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2011/02/18  たからばこ
どれだけ大切にしたって
どれだけ慈しんだって
ぼくのものになるきもないでしょ

アラベスク
もっと早く
こんな指など折れたらいい

どれだけ愛したって
どれだけ撫でたって
あたしをふりかえることもないでしょ

ポーコアポーコ
もっと遅く
こんな体など溶けてしまえばいい

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